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zoom RSS 津川しょうごNews2011年6月5日号

<<   作成日時 : 2011/06/06 00:50   >>

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人の術にカネをかける。
〜災害復旧事業における工法について〜

 6月に入り全国的に梅雨入りの時期となりました。今般の東日本大震災で被災した地域では、河川堤防や海岸堤防が大きく損壊した地域も多く、また、山間でも地震によって急傾斜地等で土砂災害の危険性が高まっている地域もあることから、国土交通省では自治体と連携し、これからの本格的な出水期に向けて急ピッチで応急復旧工事等を進めているところです。

 特に、津波被害の大きかった海岸地域では、地震により広範囲にわたって大きく地盤が沈下しており、高潮により度々浸水に見舞われる地域も出てしまっています。緊急対応として住宅地域だけでも浸水を免れるよう大型土嚢などを用いた浸水防止対策などを進めていますが、場所によっては瓦礫の除去が捗っていない事などにより、これらの応急復旧工事が遅れている地域もあります。瓦礫の除去は本来自治体の業務であり、国においても所管省庁は環境省ですが、国土交通省としても「出来る支援は全て行う」という発想で、自治体や環境省を支援して瓦礫除去を進め、海岸堤防の応急復旧を急いでいきたいと考えています。

 一方で、緊急対策や応急復旧がひと段落した後の本復旧については、多少の時間をかけることは不可避です。今回の大災害の教訓を今後の防災にどの様に生かすのか、あるいは今後どの様なまちづくりを進めていくかなど、じっくりと腰を据えた議論をし、地域住民の方々にも支持して頂けるような将来ビジョンが定まらなければ、どこにどの程度の堤防を作ればよいか、なかなか手がつけられないのが現状です。またそもそも、100年に一度、もしくは1000年に一度あるかないかという災害にも対応できる構造物を作るとするならば、財政制約からしても、仮に着工しても完成までにはある程度時間をかけざるを得ないのが現実です。

 そこで私は現在、国土交通省内で、河川や海岸、砂防工事などで従来よりも防災能力を高めなければならない場合などにおいては、必ずしも従来工法にとらわれることなく、多少時間と建設コストがかかったとしても、安全性や耐久性の高まる工法も含めた検討をするよう要請したところです。狙いは大きく分けて2つあり、一つは長期的な視点に立って維持管理コストを下げること。もう一つは、地域の雇用を維持することです。

 これまでの公共事業は、財政制約の観点から建設費のコストを縮減することはあっても、建設の段階から維持管理コストが意識されることはまれで、トータルコストがまともに議論されるようになったのは最近のことです。ライフサイクルの長い構造物の場合はやむを得なかったことだとは思いますが、これから新しく大規模な構造物を作るときには、必ず長期的な維持管理コストを計算する必要があり、仮に建設コストが上がる工法であってもトータルでのコストが下がるのであるならば、今、多少借金をしてでも進める優位性があると考えます。

 技術ある作業員を必要とする工法
 コストが上がる原因にはいくつかのパターンがありますが、私がイメージしているのは、手間がかかるために時間や人件費がかかる工法です。安全性が向上する一方で手間がかかるためにコストが上がり、時間もかかる工法。誰にでもできる単純作業というよりは、技術を持った作業員だからこそできる作業。そんな「人の術」に対してしっかりと対価を払えるような工法を推奨することができないか、省内でもまだ検討の検討といったところですが、担当者に指示を出したところです。
 
 建設コスト縮減を意識しすぎた中では採用されなかった工法でも、環境負荷が少なかったり耐用年数が長いなど、メリットのあるものも少なくありません。もちろん、余りにも高コストになってしまっては採用は困難ですが、あまり先例にとらわれず、新しい工法や伝統工法を改良したものなど、しっかりと検討していきたいと考えています。既に私のところに自然を生かした新しい工法の提案なども頂いているところですが、幅広いアイデアを頂きたいので、是非多くの方からのご提案をよろしくお願いいたします。

新しい交通文化を創り出す。
〜次世代ITSの推進について〜

 国土交通省では、交通事故や交通渋滞といった諸問題を解決する目的で、最先端の情報通信技術を用いて人と道路とクルマとを情報ネットワークで結ぶITS(高度道路交通システム)の推進を図ってきました。これまで、高度なカーナビゲーションシステムや自動料金収受システム、安全運転支援システムなど、9つの分野で技術開発がすすめられ、その中のいくつかは既に実用化されています。

 その中で今年大きな変化があるのが、ITSスポットの全国展開です。ITSスポットとは高速道路の本線上やサービスエリア、道の駅などに設置されるもので、ITSスポットに対応する新しいタイプのカーナビを車に積むことにより、道路とクルマの間で高速・大容量の通信を可能とするものです。特に実用化が期待されているものは、広範囲の渋滞情報を提供するダイナミックルートガイダンスと安全運転支援です。

 既存のカーナビでもVICS対応のものでは交通情報が提供されていますが、割合に近距離の情報しか提供されず、高速道路などで長距離を移動する際には十分なルート判断ができないケースがありました。これに対してITSスポットでは、道路延長で最大約1,000kmの道路を対象に、区間ごとの所要時間のデータがカーナビに提供されるため、カーナビが随時最速ルートを再計算して案内することが可能になります。また安全運転支援では、高速道路上の落下物情報や渋滞の末尾情報、これから向かう先の雪や霧などの天気情報などが静止画や音声等で提供され、高速道路上での事故を未然に防止することが期待されます。実際にITSスポットが先行導入された首都高の参宮橋カーブでは、首都高でワースト1位であった事故発生件数が追突事故などを中心に約6割削減することができました。

 このITSスポットを今年から全国に約1,600箇所整備。都市間高速道路では概ね10kmおきに、都市内高速道路では概ね4kmおきに設置していく予定です。クルマに搭載するITS対応カーナビの普及も必要になりますが、各メーカーが競って新商品の開発をしており、普及に従い価格も下がってくることが期待されますので、今後新しいカーナビを購入される予定のある方は、是非一度検討を頂ければと思います。

 しかし、私が是非実現したいのは、その程度のことではありません。
 私が考える次世代ITSの最終形は、自動車専用道路におけるクルマの自動運転です。これまでも自動運転については様々な研究がなされ、その研究過程で開発された技術が現在既に市販されているクルマにも採用されています。前方のクルマの動きを検知して自動的にブレーキをかける衝突軽減システムや、オートクルーズシステムなどがそれです。既に様々な技術開発が進み、おそらく現在の技術でも完全な自動運転は不可能ではないはずですが、安全性の検証や法律の整備、そもそもどの様なシステムで道路構造やクルマの構造を統一するか、といった課題がまだ積み残された状態です。それらの最後の関門を一気に突破するため、先日大臣に許可を頂き、私自身が中心となって省内に次世代ITSに関する勉強会を立ち上げました。これまでの議論を加速させ、官民一体となって規格を完成させ、日本が世界をリードしながら国際標準を作り上げる。センサーなどの部品技術が優れた日本のモノづくりの優位性を生かし、日本が世界で勝ちぬける新しいフィールドを戦略的に作っていきたいと考えています。

 休みの日に、マイカーで家族旅行を楽しまれる方も多いと思います。鉄道や船で旅行するのも他に代え難いものがありますが、例えば、マイカーで数百キロ離れた観光地まで自動運転で遊びに行くことができたらどうでしょうか。ドライバーのお父さんだけ蚊帳の外になるのではなく、家族が一つになって専用の個室で移動できる旅行なら、これまでよりももう少し遠くまで行ってみる気になりませんか?それは、新しい交通文化を創ることだと、私は考えています。これまでのITS開発をさらにもう一歩進め、近い将来、日本初の新しい交通文化を世界にも発信できるよう、夢を持って次世代ITSを推進してまいります。

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